フジコさんの演奏はまさに、団欒を感じさせる「カウンセリグ」

私が通う教室の先生は倹約家です。だから滅多に演奏会には出掛けないですし、それよりも普段のレッスンのせいで演奏会に行っている暇がないそうです。ですが少し前知り合いの先生に誘われ、演奏会にお出掛けになったそうで、その時の話を私達に聞かせて下さいました。

演奏者はフジコ・ヘミングさんで、先生がお好きなピアニストの一人です。オーケストラとの競演とピアノソロをご覧になられたそうで、真ん中よりも後ろの席にお座りになったそうです。ですがホールのせいもあるでしょう。フジコさんの音はとても小さかったそうです。フジコさんは大きいホールで聴かれるよりも、サロンのような身近な人々との団らんの中で奏でられることに向くピアニストさん、だと話されました。先生曰く、団欒を感じさせるそうです。身近な団欒は、現代の我々にとって不可欠なのではないでしょうか。
私が公立図書館からフジコさんのCDを借りてきた時のことです。フジコさんの音は、コンポのスピーカーからとても小さな音で聞こえてきました。他のピアニストさんの場合だと小さな音量でも骨太な音が、スピーカーから響きます。ですがフジコさんの場合は、微かに響く虚ろな音色なのです。
私の住環境は近所迷惑を考えなければならない環境なので、音量には相当に気を遣います。私の先生も、多くの他の生徒仲間も同様です。小さな音量であるのに関わらず、骨太な音が聞こえてくるのは、苦情の元になってしまうかも知れないと常にびくびくしてしまいます。しかしその点フジコさんのピアノ演奏ならば安心です。虚ろな響きだからこそ、心の琴線に触れるのです。いつか苦情を出されるご近所の方から「フジコさんの演奏ならば、我々の近所迷惑にはならないから、CDをかけ続けていても構わない。」という言葉を聞きたいものです。
フジコさんは決して、商業主義に乗らないピアニストだと思っています。派手な表現をなさらない方なので、何でも前向きである事が尊重される現代では、フジコさんの演奏は認められづらい気がします。ですがだからこそ、風穴を開けて下さるピアニストさんだと感じています。昨今「前向き主義」は却って閉塞感に溢れているように思えます。「前向き」なのに心理カウンセリグの全盛期でもある気がして、そこに矛盾を感じます。
フジコさんの演奏は、相談できる方が側にいるという団欒を感じます。自分の内面と向き合える「カウンセリグ」です。

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